今回は、無生物主語についてお話しします。
無生物主語を使う文のイメージ、パターン、メリットなどについてご紹介します。
では、早速始めましょう。
無生物主語の概要とイメージ
まず、無生物主語とは何かについて確認していきましょう。
無生物主語とは
はじめに、無生物主語を使わないこの文を見てもらいたいと思います。
If you take this bus, you will go to Tokyo station.
「このバスに乗ったら、東京駅に着きます。」という感じですね。
この文では主語がyouですので、人が主語になっていますね。
では、今確認した文とほぼ同じ意味を、無生物主語を使って表してみます。
This bus will take you to Tokyo station.
です。
[take(人)to ~] は、「人を~へ連れて行く」という意味になります。
この文では、主語はthis bus(このバス)で、目的語(何をtakeするのかという対象)がyouになっていますね。
主語に注目すると「このバス」ですから、これは当然、生き物ではないものです。
このように、かたちのある物であったり抽象的なものであったりといった、生き物でないものも主語になることがあります。
これが無生物主語と呼ばれているんですね。
この文は直訳すると、「このバスはあなたを東京駅につれていく」という意味になり、日本語の感覚では非常に不自然な文になります。
ですが、このような「無生物が主語で人が目的語」という文は、英語では全然珍しくありません。
まずはそのことを認識してもらえればと思います。
無生物主語の文のイメージ
次は、無生物主語の文のイメージについて触れたいと思います。
無生物が主語になる文、特にその中でも先ほどのような目的語が人になる文というのは、日本語ではほぼ無いかと思います。
少なくとも、自然な話し方をしていると多用はしないはずです。
ですが英語では、
物などの無生物が
何らかの形で人に作用し
その結果、その人が何かしたり、しなかったり、できたり、できなかったりする
というこの思考の流れがごく普通に存在します。
先ほどの文(This will take you to Tokyo station. )にあてはめると、
このバスが
あなたを連れて行く
その結果、あなたは東京駅に着く
という形ですね。
英語を効率的に理解するには、やはり英語の思考の流れで理解できるのが望ましいです。
なので、すぐに「日本語ではこう言う」とか「どう訳せばいいか」と考える前に、「英語ではこう言うんだ」と、英語を英語の流れのまま捉えるように意識してみることをおすすめします。
無生物主語のパターン
では、もう少し具体的な話に入っていきましょう。
無生物主語といっても、このような文の形を取る主語になる言葉は、だいたいですがジャンルが決まっています。
特によく見られるものを3種類あげると、
- 手段・方法
- 原因・理由
- 情報源
です。
もちろんこれを覚える必要はないのですが、なんとなくでも知っていると無生物主語の文が理解しやすくなるはずです。
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
手段・方法
まずは、手段や方法を表す無生物主語の例です。
先ほどのバスの文をもう一度見てみましょう。
This bus will take you to Tokyo station.
This busが主語、youが目的語になっています。
直訳すると、「このバスがあなたを東京駅につれていく」ですが、この主語(this bus)と、この文が表している最終的な結果「あなたが東京駅に着く」ことの関係性を考えてみましょう。
この文では、この“this bus”というのは、明らかに東京駅に行くための交通手段になっていますよね。
なので、もし日本語に訳す必要があるとか、自然な意味で理解したいという場合は、この関係性を意識して日本語にしてあげるといいです。
日本語では「このバスが連れて行く」とは普通は言わないので、
このバスという交通手段を使えば
つまり
このバスに乗れば
東京駅に着く。
などと考えるといいですね。
もう1つ例を見てみましょう。
Clicking on the link will lead you to the website.
です。
主語にingの形、動名詞が使われていますね。
動名詞について詳しく知りたい方は、是非以下の動名詞についての記事をご覧ください。
この文では“clicking on the link”(そのリンクをクリックすること)が主語で、youが目的語になっています。
[lead(人)to ~]は、「(人)を~へ導く」という表現です。
直訳すると、「このリンクをクリックすることがあなたをそのウェブサイトへ導く」という、日本語の感覚だと何ともむず痒い文になりますね。
では、この主語と、この文が表している結果、要は「そのウェブサイトにアクセスする」ということの関係性を考えてみましょう。
すると、「このリンクをクリックすること」というのは、そのウェブサイトにアクセスするための方法ですよね。
なのでもし日本語に訳す必要があるのなら、「そのリンクをクリックすることは」ではなくて、
そのリンクをクリックするという方法で
という意味、つまり、
そのリンクをクリックすると
そのウェブサイトにアクセスできる。
などと訳してあげるとしっくり来ますね。
ちなみに無生物主語の文でよく使われる動詞というのもだいたい決まっていて、今回ご紹介したようにtakeやleadなどはよく遭遇するかと思います。
なので、無生物主語の文に出会ったら動詞にも注目するといいですね。
原因・理由
次は原因や理由を表す無生物主語の例を見ていきましょう。
たとえば、
That film made me cry.
です。
[make (人) do] は、「人に~させる」という意味ですね。
doの部分には動詞の原形が入ります。今回はcry(泣く)です。
この文では、“that film”(あの映画)が主語、me(私)が目的語になっています。
なので、直訳すると「あの映画が私を泣かせた」となります。
これも主語と、この文が表す結果の関係性を考えると、“that film”(あの映画)は、私が泣いた原因ですよね。
なので、日本語にするならそれを踏まえて自然な形にしてあげるといいです。
「あの映画が」ではなくて、
あの映画を見て
私は泣いた。
といった感じですね。
もう1つ例を見てみましょう。
The pandemic prevented me from visiting her.
です。
[prevent(人)from doing] は、「(人)が~するのを妨げる」という表現です。
doingの部分には動名詞の形が入ります。今回はvisitingですね。
“The pandemic”が主語、meが目的語です。
パンデミックという言葉は、特に今回のコロナの件で日本語にも定着しましたよね。
感染症などの病気の大流行を意味します。
直訳すると、「パンデミックが私が彼女のもとを訪れるのを妨げた」となります。
ぎこちない文ですよね。
そこで主語と結果の関係性を考えると、“the pandemic”は、私が彼女に会いに行けなかった理由です。
なので、日本語にするとしたら、それを踏まえて訳してあげるといいです。
たとえば、
パンデミックのせいで
彼女に会いに行けなかった。
といった感じです。
最後に動詞にもう1回注目しておきましょう。
今回の例ではmakeと、preventですね。この2つも無生物主語の文でよく目にする動詞です。
情報源
では3つ目、情報源を表す無生物主語の例を見ていきましょう。
たとえば、
The research tells us that making a mistake is actually a good thing.
です。
“the research”(その研究)が主語、us(私達)が目的語ですね。
直訳すると、「その研究が私達に間違えることは実際にはいいことだと言っている」という感じです。
要は、「私達はこの研究の内容から、間違えることは実際にはいいことだという情報が分かる」ということなので、“the research”というのは、その情報を示しているものですよね。
なので、日本語訳するなら、たとえば、
その研究から~だということが分かる
といった感じにすれば、より自然に聞こえるはずです。
もう1つ例を見てみましょう。
The study shows us that 35% of adults use social media while watching television.
です。
“the study”(その調査/研究)が主語、usが目的語です。
直訳すると、「その調査が私達に大人の35%がテレビを見ながらソーシャルメディアを利用していることを示している」といった感じです。
これも、“the study”というのは、そういった情報を示しているもの、つまり情報源です。
なので、それを踏まえて日本語にするなら、たとえば、
その調査によると~だ
といった訳が考えられますね。
ここでも最後に動詞にもう1度注目しておきましょう。
tellとshowですね。これらの動詞もよく無生物主語の文で目にするかと思います。
無生物主語を使うメリット
ここまで、無生物主語のイメージや主語となる言葉のパターン、意味などを確認してきました。
結構しつこいぐらいに見てきましたので、「主語が無生物で目的語が人」という文に少し慣れてもられたのではないかと思います。
では、ここでちょっと視点を変えてみましょう。
他の言い方もできる中で、無生物主語の文にするメリットって何かあるでしょうか?
最後にその点に少し触れてみたいと思います。
接続詞を使うよりも…
無生物主語を使うメリットについてです。
初心に戻って、最初のバスの文をもう1度見てみましょう。
If you take this bus, you will go to Tokyo station.
という文と、
This bus will take you to Tokyo station.
という文です。
この2つの文は、言ってることはほぼ同じです。
ですが、1つ目の文はyouを主語にしていて、ifという接続詞を使っています。
シンプルに言うと、要は2つの文を接続詞でつなげているということです。
「もしあなたがこのバスに乗ったら、東京駅に着きます。」ということですね。
一方で、2つ目の無生物主語の文は、“this bus”が主語で、youが目的語になっていました。
こちらは、接続詞を使っていません。
その分、1つ目の文のように主語を2回繰り返すこともなく、語数が少なくて非常に「しゅっとした」文になっています。
このように無生物主語を使った文にすると、接続詞を使うよりも簡潔な文にできるんです。
その言い方、直接的すぎない?
もう1つ、別の例も見てみましょう。
たとえば、日本で外国人の知り合いに「あなたはどうして日本に来たんですか?」と聞きたいとしましょう。
そのときに、
Why did you come to Japan?
と、why(なぜ)という疑問詞を使って、youを主語にしていう文が思いつきやすいと思います。
これは文としては問題なく、意味も当然あってはいるのですが、実は結構直接的な言い方です。
「なんで日本にいるの?」というような、責めているような、ちょっと失礼な意味に聞こえてしまう可能性があります。
一方で、同じことを尋ねるときに
What brings you to Japan?
や
What brought you to Japan?
という言い方があります。
こちらは、[bring(人)to ~] は 「(人)を~へ連れてくる」という表現です。
どちらもwhatを主語とした言い方で、youが目的語なので、今まで見てきた無生物主語の文の形と同じですね。
直訳すると、
「何があなたを日本へ連れてきたのですか?」
となり、もっと自然に言うと、
どうして日本に来たのですか?
という意味になります。
こちらの表現は先ほどのwhyの文のような直接さはなく、より失礼さの感じられないニュアンスになります。
このように、無生物主語の方が直接的でない、丁寧な言い方になることもあるんですね。
無生物主語 まとめ
- 無生物主語:物や抽象的なものなど、生き物でないものが主語になること
- 無生物主語になることが多いのは、その文の意味の中で以下に該当するもの
– 手段・方法
– 原因・理由
– 情報源 - 日本語に訳すときは、主語とその文の表す結果との関係性を意識するといい
- 無生物主語の文は接続詞を使う文より簡潔で、場合によってはより丁寧な(失礼さのない)意味になる
今回は、無生物主語についてお話ししました。
非常に英語らしい表現で、面白いですよね。
最初はわかりにくく感じるかもしれませんが、今回お話しした点を少し意識してもらえると、無生物主語の文が理解しやすくなるかと思います。
このブログおよびYouTubeチャンネルでは、主に英文法や英文読解の説明をできるだけわかりやすく行っていますので、良かったらまた見に来てくださいね。
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